32期の振り返りと33期の展望 (社長 植平 修)

はじめに

 期が変わったからといって何か特別新しいことが始まるわけではなく、それなりの成功を収めた時間の続きを着実に歩むしかないと思いつつ、今年こそ今までできなかった何かができるのではないかと甘い考えや期待を持ったりするのが、私の卑しい性です。冷静に考えると、意思を持って行動したことだけが成果となって現れています。ここ数年変化に耐え、実績を上げてきたことをまず認め、やってきたことに自信を持って、よりきめ細かく・丁寧に仕事を進めることこそが今期に求められる姿勢だと考えています。

総括

 32期の売り上げは前年対比で一般建材が1%ダウンの3億8800万円、製造直売が19%アップの3億1960万円、トータルで9%アップの7億770万円となりました。また、営業利益は3877万 経常利益は4288万を計上することができました。

売り上げが7億円を超えたのは実に26期以来7年ぶりのことです。26期はすでに売り上げの急激な減少が始まり、営業・経常利益とも32期の50%程度であり、ここ数年の鋼材価格やメッキ亜鉛価格の急激な上昇を考えると、現在の状況がいかに当時から改善されたものであるかが理解できます。ただ、一般建材売り上げと製造直売の売り上げ比率は45%になり、一社の受注動向に業績が大きく左右される状態になってきました。売上高の構成においても1%以上の得意先は全得意先128社中18社であり、上記の傾向をますます強めています。32期の売り上げ増加も主にはK社の災害特需とも言うべきものであり、私達が主体的に勝ち取ったものとはいえません。優良な新規得意先の獲得や新しいマーケットで売れる商品など、自らの力で勝ち取ったといえる成果はあまり上げることができませんでした。リスク回避の手立てはいくつかあり、すでに実行していますが、まずは自社製品の売り上げを確保して行くことが重要だと考えています。公共工事は本年度も削減されるため32期に好調であった食害対策やエクステリヤといった、新しいマーケットに出ることがますます必要です。もちろん社内においてはここ数年取り組んできた、受注減にも柔軟に対応できる筋肉質でコンパクトな体質つくりを引き続き強力に進めます。

鋼材の価格は高止まりしたかに見えましたが32期の中盤からまたじりじり上昇の傾向を見せています。何より32期は亜鉛メッキ加工費が地金の高騰により、3度の価格改定という異常事態になりました。平均加工費も対前年比で40%アップし大きな減益要因となりました。値上げは期の後半であり、本格的な影響は33期に出てきます。得意先への値上げ交渉を根気強く続ける必要があります。

経営理念の実現には従業員の安全と衛生を確保することが重要なことです。31期に発生した重大な労災事故(休業3ヶ月)を踏まえ、32期は社長を委員長とする安全衛生委員会の活動を繰り広げました。様々なアンケートやイベントによって危険箇所の抽出と対策、教育を継続的に行った結果、0災害記録はようやく400日を超えました。32期に取り組んできた活動を定着させ、全社員の0災への思いを強固にするため33期も社長が先頭となり0災害に取り組んで生きます。

32期に発生した品質不適合は14件で31期と同様のレベルでした。発生の内容を見ると作業者の注意不足が原因であることが多く、目指している「間違いようのない仕組みつくり」のレベルには程遠い状態です。個人の能力に依存する品質維持にはおのずと限界があり、作業の標準化を今年も進める必要があります。ただ、人によるエラーをまったく排除することは無理なことなので「決めた事を守る」「作業場を整理整頓する」などの基本的な教育を徹底して行うことも重要です。また、顧客苦情が発生する前の間違い品の手直し事例が相変わらず多く発生しており、今後は小さな手直し事例の情報収集を数多く行い、品質向上だけでなくKAIZENや安全にも役立てたいと考えています。

財務的側面

 売り上げの好調な伸びに支えられ、32期も各財務指標、特に安全性の指標は非常に良好な値を維持することが出来ました。収益性の指標も徐々にではありますが向上しています。代表的な数値は以下のとおりです。流動比率:335% 当座比率:242% 固定比率:54% 自己資本比率:67% 売上高経常利益率:6%などです。我が社のような零細企業でこれらの数字が大きな意味を持つとは思いませんが、ここ数年続けてきた変化に耐えられる体質つくり、即ち「損益分岐点売り上げを下げる」ことに関して成果を収めつつあります。ちなみに32期の損益分岐点売り上げは3億5千万円弱であり、机上の話ですが現在の売り上げが半分になっても耐えられるところまで来ました。

28期以来久しぶりに1億円を長期借り入れで調達し、念願だった手形支払いをやめて、すべての支払いを現金振込みにしました。回収の現金化は中々進みませんが、主体的にできることから先行して取り組みました。

社長の個人資産を背景に資金繰りを行うことは、経営者が経営というものにコミットする大きな要因であると考えています。しかし、零細企業といえど社内留保を十分確保し、実態に応じた担保物件を所有する、すなわち「社長ではなく、会社が力を持つ」状態を作り上げることも重要です。今後の担保設定に備えて本社工場敷地内にあった水路(国有水路)の用途廃止・払い下げの手続きを完了しました。33期は敷地裏側の農地の地目変更を行い、ヤードの拡張工事を計画しています。地目変更の手続き完了後、現在便宜的に社長個人所有になっている所有権の移転を行う予定です。

販売側面

建材販売

32期は、公共事業(一般土木工事)が減少する中、原材料、外注加工費の高騰など、営業活動にマイナスの要因が多い年でありました。特にメッキ原材料が期の後半から急騰し、期首に比べ約3倍以上になるなど、原価の値上がりを販売価格に転嫁することに注力しました。公共事業は何年か前に積算されたものが殆どで、設計価格よりゼネコンへの販売価格が高いなど、今まで経験したことのない現象を、お客様へ御理解いただき、期待したレベルの価格への転嫁はほぼ完了しました。

建材販売の売上げは3億8809万円となり、目標の3億7220万円を4.3%上回り、31期の実績より1.8%上回る事が出来ました。期の後半に新しいお客様より大口の受注があり、売り上げを伸ばすことができました。このことも、売上目標達成の大きな要因の一つです。

ただ、利益率は若干低下しました。これは上記価格改定が原材料の高騰に追いつかなかったタイムラグ、期末に受注した仕入れ商品の、低い利益率が影響しています。

32期は、ゼネコン・コンサル(設計会社)・役所などからとの様々な形でインターネットを通した問い合わせが増え、インターネット環境が一般化したことを実感しました。

より良い製品やより安い製品、よりタイムリーに商品を供給できる会社を容易に検索する事が出来るようになり、多くの新しいお客様に植平工業鰍ニ言うブランドを知っていただきました。

これらのアクセスを実際の契約に結び付けるべく努力するとともに、「もはや営業は足で稼ぐ時代ではない」と言う錯覚を起こすことなく、小さな出会いを大事に育てあげる、足を使った営業活動も地道に展開していきます。また、取引先の情報収集に努め、ニーズや課題を的確に把握し、なくてはならないパートナーとして実際の契約に結びつけたいと考えています。

製造直売

 31期(2億6700万)に引き続き32期(3億2000万)も大幅に増加しました。近年頻発する大きな自然災害対策、K社の社内体制の変化や出荷センターとしての役割への評価などが増加の原因であると考えていますが、いずれも我が社が主体的に働いて勝ち取ったものではありません。ただ、31期も我が社の各担当者が努力した結果、不適合の発生は非常に少なく、K社から高い評価を得ています。このことは私達の行動の成果として胸を張れる事です。また、新製品に対する積極的な取り組みも評価されていると思います。K社の製品は高付加価値化のスピードを加速度的に上げており、加工精度、納期、工作難度などに十分な対応をすることがますます重要になってきました。一方、加工度の低い製品の受注も多くなっており、利益確保のために一層のコストダウンが求められます。

メタルサインはS社から外構工事の金物を受注できるようになり、受注金額は大幅に伸びました。ただ、現場施工や塗装工程などなれないことも多く、とにかく受注しようということで、当初考えていたような高い利益を上げていません。今後は新しい技術の蓄積を行うと共に利益意識を高めて受注を続けます。

33期もK社に関しては引き続き災害復旧の発注が高いレベルで続く予定です。また、昨年、一昨年に発生した災害の復旧工事が32期以降本格化し、ここ数年は現状程度の発注はあると考えています。しかし、その発注を確実な受注に結びつけるために32期同様 1、受注のインターフェース部門の資質の向上 2、新製品に対応するための技術蓄積と設備の更新 3、配送業務の効率化 などが重要なことであると考えています。32期以上にきめ細かく上記の対策を実施します。

人的側面

 32期の売り上げの増加は前述したようにK社の災害特需とも言うべきものであり、人員の募集(特に製造課員)は行いませんでした。機動的に派遣社員、契約社員、外注先を活用し対応しました。幸い派遣社員、契約社員共に技術、モラルの高い方で非常に助かっています。団塊の世代の大量定年も零細企業には関係なく、雇用については今後も慎重にならざるを得ません。期末に女性事務員の結婚による退職があり、補充しました。

 33期も計画的な採用は行わず、機動的な外注の活用を進めます。ここ数年取り組んでいた「機動的人員配置」は中々成果を上げるにいたっていません。受注の増加に伴い担当する作業に張り付く、といった状態が続きました。製品の多様化に伴い、今まで主たる工程であった「溶接作業」が「プレス作業」にその座を譲り、現在の我が社の主たる工程は「プレス作業」です。設備の更新・新規導入により、プレス作業はますます高度なNC操作が必要となり、製造場面でもキーボードへの習熟が求められつつあります。金型、NCの知識は一朝一夕に習得できるものではなく、部品加工の精度が下流の溶接工程の精度も決定します。一方、溶接工程ではますますスピードアップによるコストダウンと確実な溶接が求められており、従業員教育の方向を見直します。

経営者として安全・衛生を最重点の経営課題として取り組んだ結果、32期はO災害を達成することができました。委員会活動の活発化、安全金型化、荷役作業の作業見直しなど地道な行動を続けた成果だと考えています。引き続き社長を委員長とする安全衛生委員会を中心に過去の事故事例に学びながら活発に活動を展開し、33期も記録を更新したいと願っています。

製造設備、施設側面

 31期に導入したNCバックゲージ付プレスをエクスパンド製品の多様化に伴い移設し、同規格のプレス機を新規導入しました。当初中古機を探しましたが、景気回復の影響かよいものがなく、また下取り予定の機械が思った以上に高価になったため導入を決定しました。共に初期の計画以上の成果を上げています。

厚板切断の設備は現在13mm用のギャップシャーがありますが、十分に活用されているとはいえません。穴あけ・型切り加工の増加や部品の厚板化を考え、対応可能な新規の設備導入を検討しましたが時期尚早と考え、見送りました。当面は外注に頼りつつ導入の時期を探ります。
ここ数年先行きの不透明感から新規の設備導入には慎重でしたが、メリットとリスクを精査しタイムリーに設備を導入することも必要です。

終わりに

 お得意先をはじめ仕入先、外注先、そして何より誠実に仕事を遂行してくれた社員のおかげで32期も比較的明るい内容の報告を行うことができました。個々に問題点を洗い出すとあまりの進歩のなさに愕然としてしまうような側面もありますが、最初に書いたように製造業の原点に立ち戻り、誠実に丁寧に仕事に取り組むことや提供している形ある製品の品質のみならず、形にならない各種のサービスについても質を高めてゆくことが重要であると考えています。もとより起死回生の妙案などというものは存在しないわけで、上記のような地道な行動がこれからより一層重要性をますと考えています。

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